『3つのWIN』で未来の子供たちにきれいな海を残す。ジャパンブルーカーボンプロジェクトの活動インタビュー

当サイトでは日本各地におけるブルーカーボンへの取り組み事例を紹介して参りました。

この度、ブルーカーボンをテーマとしたクラウドファンディングで全国的に注目を集めた、株式会社ジャパンブルーカーボンプロジェクトの加唐巧(かからたくみ)専務取締役にお話を伺うことができました。 ※当サイトと非常に似た社名ですが別団体です

海の森を再生し、未来の子供たちに美しく豊かな海を残したい。そんな想いが込められた同社設立の経緯と活動内容を紹介します。

ジャパンブルーカーボンプロジェクトが進めている磯焼け対策の雑海藻駆除実験
ジャパンブルーカーボンプロジェクトが進めている磯焼け対策の雑海藻駆除実験

インタビューで最も印象的だったのは同社が目指す、漁協、行政、パートナー企業、それぞれの『3つのWIN』という言葉でした。

株式会社ジャパンブルーカーボンプロジェクトについて

株式会社ジャパンブルーカーボンプロジェクトは、2021年9月に設立されました。代表取締役の吉川京二さんは1945年生まれの76歳です。

これまでのビジネスにおいて有名企業にお勤めになり数々の新規事業の立ち上げを担当、その後独立し地方活性化やマーケティング、経営戦略構築などのコンサルティングを行っています。

ジャパンブルーカーボンプロジェクトの設立経緯

吉川さんがとある縁で北海道浜中町の水産加工販売業者から、ブルーカーボンの問題と磯焼けの原因が『ウニ』であると話を受け、ビジネスの第一線を退いた今、社会に何か貢献したいと思ったことがプロジェクトを立ち上げるきっかけとなったそうです。

今回インタビューにお答えいただいた加唐さんも、吉川さんと同じ企業のご出身です。吉川さんは加唐さんの最初の上司で、お二人のお付き合いはなんと40年にもなるといいます。

2021年9月に北海道にて現在の同社の前身となる株式会社北海道ブルーカーボンプロジェクトを設立しましたが、日本全国・海外からの要望に応えるべく、2021年12月に現在の社名になりました。

磯焼けによって消失した藻場の再生活動

ジャパンブルーカーボンプロジェクトは、パートナー企業の支援を受け、磯焼け等によって消失しつつある藻場(もば)を再生しブルーカーボンへ貢献することを現在の主な活動内容としています。

磯焼けによって消失した藻場の再生活動

磯焼けとは沿岸の浅海から海藻・海草が著しく消失する現象です。日本にはアマモやスガモといった海草(うみくさ)類や、ワカメやアラメ、カジメといった海藻(うみも)類が群落となり藻場を形成しています。

磯焼けの原因は海水温の上昇、海の環境汚染、生物による食害などが挙げられます。藻場が失われることで、ブルーカーボン生態系の消失、藻場に生息する水産資源の減少、海の生態系への影響が発生する恐れがあります。

磯焼けは日本のみならず世界的な課題となっています。オーストラリアでは藻場が消失すると同時にウニが増え、その駆除費用が大きな負担となる問題も出てきているそうです。

同社は新しい藻場生産力向上と、ウニをはじめとした生物による食害を低減することで藻場を再生し、CO2吸収力の向上を図っています。

また、協力会社である北海道のウニ加工販売業者の技術を利用し、駆除したウニを陸上養殖し身が詰まった良質なウニに育てて販売する研究開発を行っています。

磯焼けの詳細やブルーカーボンとのつながりについては別の記事でも詳しくご紹介していますので、こちらをご覧ください。

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釧路西港における実証実験の開始

ジャパンブルーカーボンプロジェクトは2022年3月から、北海道の釧路港西港区においてブルーカーボン活動推進の実証実験を開始しました。

釧路西港における実証実験の開始

天然コンブ漁場において雑海藻を駆除することでコンブの増殖を促進したり、自然発生に頼らない種(スガモ)を植生しどのくらい繁茂するか、といった実験を行っています。

コンブに目をつけた理由として、ブルーカーボンの視点から見ればCO2吸収量が他の海藻に比べ高いこと、一方で漁業協同組合(漁協)から見れば販売による収益性が高いためとのことです。

自然相手の実験はすぐには結果の出ないものです。本実証実験は2025年に最終記録が行われ、検証結果がまとめられる予定です。

ジャパンブルーカーボンプロジェクトが進めている磯焼け対策の雑海藻駆除実験
ジャパンブルーカーボンプロジェクトが進めている磯焼け対策の雑海藻駆除実験

異例のクラウドファンディング

ジャパンブルーカーボンプロジェクトが進めているクラウドファンディング キャンプファイア

2022年2月、同社はウェブサイト設立費や活動費用のためクラウドファンディングを行い約150万円の投資を受けました。

クラウドファンディングという形式をとった理由について、より多くの方にブルーカーボンを知ってもらいたいという想いがあったといいます。結果として、北海道にお住いの個人や企業などを始めとして日本全国の多くの方から支援を受けることができたそうです。

https://camp-fire.jp/projects/view/550677 ※Campfireサイトへ移動します

人脈を活用したブルーカーボンの啓蒙

同社の取り組みで行われる磯焼け対策は、様々な技術を持った協力会社との連携によって実現しています。

雑海藻の駆除工法において、藻場ができない岩場を清掃することにより新しい藻場を形成することができる特許を持つ企業や、前述したウニの陸上養殖技術を持つ企業などがそれにあたります。

これも、吉川さんや加唐さんがこれまで築いてこられた人脈によるもの。農林水産省や国土交通省ともつながりがあり、ブルーカーボンの啓発について話を進めているとのことでした。

クラウドファンディングにより広く一般の方々にブルーカーボンを伝えると同時に、行政など大きな視点からもアプローチを進めるやり方は、これまでビジネスの舞台で活躍してこられたお二方ならではの方法といえるのではないでしょうか。

人脈を活用したブルーカーボンの啓蒙
磯焼けの厄介者、ウニを養殖し価値を付ける

目標とする『3つのWIN』

2021年11月に、北海道白糠町でブルーカーボンについての説明会を同社が主催しました。まずはこれが活動の第一歩です。

加唐さんはインタビューの中で、ジャパンブルーカーボンプロジェクトが目指すのは、『漁協のWIN、行政のWIN、パートナー企業のWIN』この『3つのWIN』だと仰っていました。

『漁協のWIN』とは漁場清掃や、藻場の再生による魚類・甲殻類など水産資源の回復、育成した昆布の販売による収益などを指します。

『行政のWIN』はブルーカーボン活動実施による町の活性化・ブランド化や、昆布販売などでの雇用の増加を指します。

そして『パートナー企業のWIN』はブルーカーボン貢献による脱炭素社会、社会貢献を目指す企業としての評価・イメージアップを指しています。

この3つのWINを実現することで、持続可能な磯焼け対策によるブール―カーボンへの貢献を目指しています。

ジャパンブルーカーボンプロジェクトの将来

同社がブルーカーボンの考え方を広めるために行政や漁協の方々へ説明する活動の中で感じたのが、『現場レベルで行動が起こらないとこの問題は解決しない』ということだそうです。

国が目指す2050年のカーボンニュートラルに向けて多くの上場企業が活動を始めていますが、自社が排出するCO2の削減には取り組んでいるものの、新たなCO2吸収源を作る動きはまだまだだと言います。

将来的には藻場の再生によって増加したCO2吸収量に応じたクレジットをパートナー企業へ販売するということでした。

以下は、『3つのWIN』によって実現を目指すジャパンブルーカーボンプロジェクトの願いです。

  1. ブルーカーボンで地球温暖化を防ぎ、脱炭素社会を目指します。
  2. CO2を吸収し、生物の多様化を育み、豊かな海を目指します。
  3. 未来の子供たちにきれいな海を残します。
  4. 故郷の海をきれいにし、活気ある街づくりを目指します。
  5. ブルーカーボン事業を通じて、社会に貢献すると共に地域の活性化にも取り組みます。

ビジネスから引退し、これまでに築いた豊かな人脈で社会貢献を目指す。ジャパンブルーカーボンプロジェクトの活動は、きっと未来の子供たちに良い影響を与えることと感じました。

お忙しい中インタビューにお答えいただいた加唐巧専務取締役に心より感謝申し上げます。

インタビューを終えて

加唐さんへのインタビューで特に印象に残ったのは『漁協、行政、パートナー企業の3つのWIN』と、『現場レベルで行動が起こらないとこの問題(磯焼け)は解決しない』という2つの話です。

『3つのWIN』を重視することで、磯焼け対策に収益性を持たせることや、パートナー企業にとってはカーボンオフセットへ貢献できることなどそれぞれ利益が得られ、持続可能なブルーカーボン対策になるということが非常に納得感のあるお話でした。

そして、磯焼け問題に対しクラウドファンディングを活用して一般の方々へブルーカーボンの重要性を訴える一方、行政に対しても話を進めていくという両軸からのアプローチは、豊かな人脈を構築してきた吉川さん、加唐さんお二人ならではの優れた方法であると感じました。

偶然ながらよく似た名前の団体同士、これからも株式会社ジャパンブルーカーボンプロジェクトの取り組みを応援して参ります。