ブルーカーボンに取り組む日本国内の事例を徹底解説

ブルーカーボンが優れたCO2吸収源として注目される理由は次の3つの特徴を持つからです。

  1. CO2吸収能力が極めて高いこと
  2. 長期間、海底に貯留され、大気中にCO2を再放出しないこと
  3. CO2の吸収・貯留を自然作用で行うこと

ブルーカーボンを活用する取り組みの、日本国内の事例を国、地方自治体、民間に分けてご紹介します。

ブルーカーボンの特徴、課題と日本国内の取り組みの事例

ブルーカーボンの特徴、課題と日本国内の取り組みの事例

地球温暖化対策として全世界が大気中の二酸化炭素の排出削減に取り組む中、優れたCO2吸収源として、ブルーカーボンが注目を集めています。

ブルーカーボンとは海藻などの海洋生物が大気中の二酸化炭素を原料として作り出した有機炭素化合物が海底に貯留されたものです。ブルーカーボン生態系は海草藻場(うみくさもば)、海藻(うみも)藻場、干潟、マングローブ林などに生育しています。
このブルーカーボンのCO2吸収源としての特徴と課題、また、その課題解決に取り組む日本国内の事例をご紹介します。

奄美大島のマングローブ林
奄美大島のマングローブ林

ブルーカーボンの3つの特徴

ブルーカーボンが優れた吸収源として注目される理由は、次の3つの特徴を持っているからです。

  1. ブルーカーボン生態系のCO2吸収能力は極めて高く、地球上の生物が大気中に排出するCO2の約30%を吸収すると言われています。これはグリーンカーボンを作る陸上の植物の吸収能力、約12%をはるかに上回る数値です。
  2. ブルーカーボンは浅海底に数千年という長期間にわたって貯留され、大気中にCO2を再放出しません。浅海底の泥は無酸素状態のためバクテリアによる分解が起こらないからです。
    ブルーカーボンのこの働きはカーボンリサイクルの中で「ネガティブ・エミッション(ゼロではなくマイナスの排出)」と位置付けられています。
  3. ブルーカーボン生態系が大気中のCO2を吸収・貯留する働きは自然作用で行われるので、人によるエネルギーやコストの投入は不要です。

ブルーカーボンに関する2つの課題

  1. ブルーカーボンの優れたCO2吸収能力が認められたのは最近のこと(約10年前)であるため、ブルーカーボンについては未知の要素が多く、クレジット化も始まったばかりの段階です。
  2. 沿岸のインフラ建設やゴミ投棄のためにブルーカーボン生態系の破壊が急速に進んでいます。

日本国内におけるブルーカーボンを活用する取り組みの事例

日本国内におけるブルーカーボンを活用する取り組みの事例

日本国内においても国、地方自治体、民間によるブルーカーボン活用の取り組みが行われています。

国による取り組みの事例

国土交通省の取組事例

2019年10月「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」を設置しました。翌年より毎年3回検討会が開かれ、2021年10月の検討会では、ブルーカーボン・オフセット・クレジット制度の試行が議題に取り上げられています。

水産庁の取組事例

日本の海域別に藻場面積の推定、海域別・藻場タイプ別に単位面積当たりの炭素吸収量を実測・集計、日本の周辺を対象として、炭素固定能力の高いアマモ場の分布を調べる、などの取り組みを行っています。

地方自治体による取り組みの事例

横浜市の取組事例

2019年より、横浜市海の公園にある海草藻場のアマモのブルーカーボンをクレジットとして認証しています。

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福岡市の取組事例

2020年より、福岡市博多湾にある海草藻場のアマモや海藻のブルーカーボンをクレジットとして認証しています。

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民間による取り組みの事例

ブルーカーボン研究会の取組事例

2017年に専門家、関係団体などをメンバーとして設立され、翌年3月、2030年の日本におけるCO2吸収量の見込み試算を発表しました。

日本製鉄の取組事例

ブルーカーボンに関する基礎研究、鉄鋼製造の副産物である鉄鋼スラグを活用した浅場、干潟、藻場などの造成、北海道などにおいて、鉄鋼スラグから作られる肥料を用いた藻場の再生、などの取り組みを行っています。

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横浜市漁業協同組合、特定非営利活動法人海辺作り研究会、金沢八景-東京湾アマモ場再生会議

2021年に国と連携して、横浜市ベイサイドマリーナの海草藻場、海藻藻場を対象にしたブルークレジットを認証して発行し、同年3月、譲受者によるオフセットが行われました。

まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • ブルーカーボンとは、海藻などの海洋生物が大気中の二酸化炭素を吸収して作った有機炭素化合物が浅海底に貯留されたもので、CO2の優れた吸収源として注目されています。
  • ブルーカーボンの特徴は、以下の3点
    1. 大気中のCO2の吸収能力が極めて高いこと
    2. 数千年という長期間、海底に貯留され、大気中にCO2の再放出をしないこと
    3. CO2の吸収と貯留は自然作用により行われ、エネルギーやコストの投入は不要であること
  • 日本国内のブルーカーボン活用の取り組みの事例は国(国土交通省、水産庁)、地方自治体(福岡市、横浜市)、民間(ブルーカーボン研究会、日本製鉄、横浜市漁業協同組合他)などに見られます。
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参考文献