昨今よく耳にする「脱炭素」という言葉の意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることです。
日本も含めた世界の多くの国々が、2050年に脱炭素を実現することを宣言しています。この目標に向けた日本政府の政策と、日本企業の取り組み事例をご紹介します。
脱炭素とは
最近よく「脱炭素」という言葉を耳にします。脱炭素の意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、CO2の排出を実質ゼロとすることです。
脱炭素が必要とされる理由は地球温暖化対策です。CO2は地球温暖化の原因である温室効果ガスの主成分だからです。
2015年に締結されたパリ協定において、今世紀後半の脱炭素の実現が謳われたのを受けて、日本も含めた多くの国々が2050年までに脱炭素を実現することを宣言しています。
脱炭素の詳しい意味や実現方法については以下の記事で詳しく解説しています。
脱炭素とは、人為起源のCO2排出量と吸収量を等しくさせて、排出を実質ゼロにすることです。 脱炭素が必要な理由は地球温暖化危機を回避するためです。脱炭素を実現する方法には、CO2排出の削減と吸収の促進があります。 脱炭素とは、二[…]
脱炭素に向けた日本政府の政策
環境省の脱炭素ポータル・国の取組では、国の具体的な政策として、8つの取り組みが取り上げられています。その中から特に重要なものを3つ選んで、内容をご紹介します。
地球温暖化対策計画などの策定
2021年10月、地球温暖化対策計画が閣議で決定されました。これには、2030年度の時点で、温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを踏まえて、それを実現するための対策・施策が記載されています。
その内容には、再エネ利用や省エネの拡大のための方策、産業・運輸部門への支援策、2030年度までに100以上の「脱炭素先行地域」を創出することなどが盛り込まれています。
2050年脱炭素実現に向けたグリーン成長戦略
2020年12月、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。「カーボンニュートラル」は「脱炭素」と同じ意味です。
グリーン成長戦略は、2050年脱炭素を実現するために、国としてできるだけ具体的な見通しを示し、民間企業が挑戦しやすい環境を作るための戦略を示したものです。成長が期待される産業の14分野を選んで、それぞれに高い目標を設定し、それに向けたあらゆる政策を提示しています。
ゼロカーボンシティの表明から実現に向けての支援
地球温暖化対策の推進に関する法律においては、各地方自治体はそれぞれの地域の社会的条件に応じて、脱炭素に向けた総合的・計画的な施策を実施するように努めるものとする、と記されています。
これに応じて、2021年6月の時点で、400を超える地方自治体がゼロカーボンシティを目指すことを表明しています。このような地方自治体の取組に対して、環境省では情報基盤の整備、計画等の策定の支援、設備などの導入の支援をして行きます。
脱炭素に向けた日本の企業の取り組み事例
今度は日本の大企業で、脱炭素に取り組んでいる事例を3つご紹介します。
再生可能エネルギーに関わるトヨタ自動車の取り組み
トヨタ自動車では「トヨタ環境チャレンジ2050」という取り組みにおいて、自ら再エネ発電、工場・販売店では省エネ技術の展開と再エネ・水素の共同利用、ユーザーのためには地域エネルギー事情に応じた3つの電動車種の使い分け、使用済み電池の再利用・再資源化、というプロセスを考えています。
第7次の2025年目標においては、新車平均CO2、30%以上削減(2010年比)など、6つのチャレンジを設定しています。
街全体で脱炭素を目指すパナソニックの取り組み
パナソニック株式会社は「パナソニック環境ビジョン2050」という計画を策定し、2050年脱炭素実現に向けた取り組みを行っています。
生産活動においては工場からのCO2の排出をゼロにするCO2ゼロ工場を推進しています。また、「サスティナブル・スマートタウン」というプロジェクトでは、町全体で気候変動への負荷を抑える取り組みとして、街全体の消費電力を100%再生可能エネルギーで賄う「再エネ100タウン」の創出を目指しています。
ブルーカーボンに関わる日本製鉄の取り組み
日本製鉄株式会社では、ブルーカーボンに関わる取り組みを行っています。
ブルーカーボンとは海藻などの海洋植物が大気中のCO2を吸収して、光合成反応によって作り出す有機炭素化合物で、現在、優れたCO2吸収源として注目を集めています。
日本製鉄ではブルーカーボンに関する基礎研究、鉄鋼製造の副産物である鉄鋼スラグを活用した干潟や藻場(ブルーカーボン生態系)の造成、また鉄鋼スラグから作られる肥料を用いた藻場の再生などの取り組みを行っています。
その他、日本における脱炭素の取り組み事例を以下の記事で紹介しています。
脱炭素とは、二酸化炭素の排出量と吸収量を等しくさせて、二酸化炭素の排出を実質ゼロに抑えることです。 二酸化炭素は現在、地球温暖化危機をもたらしている温室効果ガスの主成分です。従って脱炭素の実現は、世界全体が真剣に取り組むべき緊急課題[…]
まとめ
- 脱炭素とは、人為起源のCO2の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、CO2の排出量を実質ゼロにすることです。
- 脱炭素に向けた日本政府の政策の主なものとして、地球温暖化対策計画の策定、2050年脱炭素実現に向けたグリーン成長戦略、ゼロカーボンシティの表明から実現に向けての支援、などがあります。
- 脱炭素に向けた日本の企業の取り組み事例としては、再生可能エネルギーに関わるトヨタ自動車の取り組み、街全体で脱炭素を目指すパナソニックの取り組み、ブルーカーボンに関わる日本製鉄の取り組み、などがあります。
参考文献
- 環境省「脱炭素ポータル・国の取組」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/road-to-carbon-neutral/#to-spec - トヨタ自動車株式会社「トヨタ環境チャレンジ2050 2025年目標―第7次トヨタ環境取組プランー」
https://global.toyota/pages/global_toyota/sustainability/esg/seventh_environmental_action_plan_jp.pdf - パナソニック株式会社「環境:パナソニック環境ビジョン2050」
https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/pdf/sdb2018j-05.pdf - 日本製鉄株式会社「鉄鋼スラグを活用したブルーカーボン技術の開発」
https://unit.aist.go.jp/gzr/zero_emission_bay/mm/nippon-steel/nippon-steel_7.pdf