ゼロカーボンとは、二酸化炭素(CO2)の排出と吸収を釣り合わせて、CO2の排出を実質ゼロにすることです。
ゼロカーボンシティとは、2050年までにゼロカーボンの実現を目指すことを宣言した都市を指します。ゼロカーボンシティの具体的な取り組み事例を3つご紹介します。
ゼロカーボンとは
この記事のテーマはゼロカーボンシティですが、その準備として、先ずゼロカーボンについてご説明します。
ゼロカーボンの意味と背景
ゼロカーボンの意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、CO2の排出を実質ゼロにすることです。CO2は地球温暖化をもたらす温室効果ガスの主成分です。
これが注目される背景には、2015年のパリ協定において今世紀後半のゼロカーボン達成が謳われたのを受けて、日本も含めた世界各国の政府が、2050年までのゼロカーボン実現を宣言している、という事実があります。
ゼロカーボンとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と、植物などによる吸収量を等しくさせて、CO2の排出を実質ゼロに抑えることです。 ゼロカーボンが注目される背景には地球温暖化危機があります。CO2は温室効果ガスの主成分だからです。 […]
ゼロカーボンを実現するには
ゼロカーボンを実現する方法としては、大きく分けてCO2の排出量の削減と吸収量の増大があります。
CO2の排出量を削減するには、太陽光・水力・風力発電や水素エネルギーなど再生可能エネルギーの活用と、省エネルギーの推進があります。
CO2の吸収量を増大するには、海洋植物のブルーカーボン生態系や陸上植物のグリーンカーボン生態系の保全・再生と、大気中のCO2を化学工学的な手段で捕獲・固定する方法の開発があります。
昨今よく耳にする「脱炭素」という言葉の意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることです。 日本も含めた世界の多くの国々が、2050年に脱炭素を実現すること[…]
ゼロカーボンシティとは
ゼロカーボンシティの意味は、2050年までにゼロカーボン(CO2の排出実質ゼロ)の実現を目指すことを表明した自治体を指します。
ゼロカーボンシティ宣言を表明した自治体には、次の2のメリットがあります。
- 環境省からその自治体の気候変動対策の立案や温室効果ガス排出量の現状を把握するための支援が受けられることです。
- ゼロカーボンを目指すために再生可能エネルギーを導入することにより、地域産業の振興や雇用の創出ができる、また災害時にもその地域に電力の供給ができるなど、地域活性化や地域貢献が可能になることです。
ゼロカーボンシティ宣言表明の状況
環境省の発表によると、2022年6月30日の時点でゼロカーボンシティの宣言を表明した自治体は、東京都や京都市を始めとして合計749自治体(全国42都道府県、440市、20特別区、209町、38村)です。
自治体数、人口の推移を見ると、以下のように急激な上昇を示しています。
- 2019年9月:4自治体、1956万人
- 2020年10月:166自治体、7883万人
- 2022年6月:749自治体、1億1852万人
ゼロカーボンシティの取り組み、3つの事例
ゼロカーボンシティの表明をした3つの自治体の取り組み事例をご紹介します。
鹿児島県鹿児島市の取り組み
鹿児島市は2019年12月にゼロカーボンシティ宣言を表明して、次の様な取り組みを行っています。
- 太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用したエネルギーの地産地消
- ごみ焼却施設、バイオガス施設の整備による再生可能エネルギーの創出
- 電気自動車、燃料電池自動車を購入する際の市民への助成、公用車への積極的な導入
- 環境学習、保全活動や地球温暖化対策のための冷房機器の賢い選択、自転車・公共交通による移動の促進などを通したエコスタイルへの転換
千葉県千葉市の取り組み
千葉市は2021年11月にゼロカーボンシティ宣言を表明して、次の様な取り組みを行っています。
- 再生可能エネルギーの導入の目標として、2016年度には2.5%であった再エネの比率を、2030年度には7.8%、2050年度には15.1%に設定しています。
- 避難施設への再生可能エネルギーの導入においては、初期費用を民間企業が負担し、千葉市が電気料を払う仕組みにより、太陽光発電設備と蓄電池を避難施設の中学校に導入しました。
横浜市と東北12市町村の取り組み
横浜市は2018年10月にゼロカーボンシティ宣言を表明しました。
2050年ゼロカーボン実現に向けた方策として、市内の消費電力の約50%を省エネルギー、約25%を新技術の活用で賄い、残りの約25%は再生可能エネルギーの導入で補うという計画を立てました。
この再エネ導入を横浜市が自前で供給することは不可能であるため、横浜市は2019年2月、再エネ資源の豊富な東北地方の12市町村と「再生可能エネルギーに関する連係協定」を締結しました。
横浜市は2011年度に温暖化対策プロジェクトとして「横浜ブルーカーボン」を立ち上げました。このプロジェクトの目的、枠組み、そして具体的な取り組み事例を詳しくご紹介します。 横浜ブルーカーボン事業の目的と枠組み 横浜市は2011[…]
まとめ
以上に述べて来たことの要点をまとめます。
- ゼロカーボンとは、人為起源のCO2の排出量と、植物などによる吸収量を釣り合わせて、CO2の排出を実質ゼロにすることです。
- ゼロカーボンシティとは、2050年までにゼロカーボンの実現を目指すことを宣言した市区町村のことです。
- ゼロカーボンシティの取り組み事例として、鹿児島県鹿児島市の取り組み、千葉県千葉市の取り組み、横浜市と東北12市町村の取り組みの3つをご紹介しました。
脱炭素とは、二酸化炭素の排出量と吸収量を等しくさせて、二酸化炭素の排出を実質ゼロに抑えることです。 二酸化炭素は現在、地球温暖化危機をもたらしている温室効果ガスの主成分です。従って脱炭素の実現は、世界全体が真剣に取り組むべき緊急課題[…]
参考文献
- 環境省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」
https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html - 環境省「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」
https://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html - 鹿児島市「ゼロカーボンシティかごしま推進計画」
https://www.city.kagoshima.lg.jp/kankyo/kankyo/kanseisaku/machizukuri/kankyo/kekaku/3rdkankyokeikaku/zerokarboncitykagoshimapromotionplan.html - 千葉市「千葉市気候変動危機行動宣言を公表しました!」
https://www.city.chiba.jp/kankyo/kankyohozen/hozen/ondanka/kikokikikodosengen.html - 横浜市「再生可能エネルギーに関する連携協定」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/ondanka/etc/renkei.html