ゼロカーボンとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と、植物などによる吸収量を等しくさせて、CO2の排出を実質ゼロに抑えることです。
ゼロカーボンが注目される背景には地球温暖化危機があります。CO2は温室効果ガスの主成分だからです。
ゼロカーボンを実現する方法には、CO2の排出の削減と、CO2の吸収の促進の2つがあります。
ゼロカーボンとは二酸化炭素の排出を実質ゼロに抑えること
最近、「ゼロカーボン」という言葉をよく耳にします。この言葉の意味や背景などについて解説いたします。
ゼロカーボンの意味
先ずカーボン(Carbon)の意味は炭素ですが、ここでは二酸化炭素(CO2)の排出量を指しています。従って、ゼロカーボンとは人為起源の二酸化炭素の排出量を実質ゼロに抑えることを意味しています。
人類は二酸化炭素を全く排出せずに生きて行くことはできないので、やむを得ず排出する二酸化炭素が出て来ます。そこで実質ゼロとは、やむを得ず排出するCO2の量と、植物などによって吸収されるCO2の量を等しくさせて相殺することです。
ゼロカーボンの同義語
現在、ゼロカーボンと同じ意味で、よく使われている言葉がいろいろあります。例えば、カーボンニュートラル、脱炭素、ネットゼロ、カーボンゼロ、などです。この内、最もよく使われているのは、カーボンニュートラルと脱炭素でしょう。環境省などの関係省庁でも、この2つの言葉を使う例が目に付きます。
ゼロカーボンの背景にあるのは地球温暖化危機
ゼロカーボンが注目される背景には地球温暖化危機があります。
地球温暖化危機
世界の平均気温は上昇を続けており、このまま放置すると地球上の全生命滅亡の危機が訪れると予測されています。
2015年の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)でも、17個の目標の一つ、13番目の目標として「気候変動に具体的な対策を」が掲げられています。
温室効果ガスの主成分は二酸化炭素
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素です。従って二酸化炭素は温室効果ガスの代名詞としても使われており、ゼロカーボンのカーボンも実は温室効果ガス全体を意味しています。
パリ協定
地球温暖化危機の解決に向けて2015年に採択されたパリ協定では次の2つを世界共通の長期目標として掲げています。
- 世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃より低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求すること
- 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
この目標を達成するために、日本も含めた世界各国が「2050年までにゼロカーボンを実現」の宣言を発しています。
ゼロカーボンを実現する方法:CO2排出の削減
ゼロカーボンを実現するための方法の一つは、二酸化炭素の排出量を削減することです。そのためには、以下の二つの道が考えられます。
再生可能エネルギーの利用の拡大
再生可能エネルギーとは太陽光、風力、水力など自然の力を基にしたエネルギーです。これらは使っても枯渇せず、何度でも利用できるので、再生可能エネルギーと呼ばれます。
化石燃料を燃やして得るエネルギーは二酸化炭素を排出しますが、再生可能エネルギーは二酸化炭素を排出しません。
再生可能エネルギーを利用する手段としては、太陽光発電、洋上風力発電、地熱発電、バイオマス発電、水素エネルギーなどがあります。
省エネルギーの推進
CO2の排出を削減するもう一つの道は省エネルギー、すなわちエネルギーの節約です。
エネルギーをカーボンフリーなものだけで賄うことは、現段階では無理で、ある程度は化石燃料に頼らざるを得ません。従ってエネルギー消費を節約することがCO2排出の削減につながるのです。
ゼロカーボンを実現する方法:CO2の吸収の促進
ゼロカーボンを実現する方法のもう一つは、大気中のCO2の吸収を促進させることです。大気中のCO2を吸収する手段には、以下の二つがあります。
自然作用を利用したCO2の吸収:植物の光合成
海陸の植物は大気中のCO2を吸収して、光合成反応により有機炭素化合物を作り出します。
陸上の植物による吸収を促進させるには植林、海洋植物による吸収を促進させるには藻場の保護・育成や藻場の人工的造成などが行われています。
人工的な手段によるCO2の吸収:CCSとCCU
大気中のCO2を化学工学的な技術を用いて分離・回収する方法には、分離・回収したCO2を地中や海中に貯留するCCS(Carbon Capture and Storage)と、回収したCO2を資源として再利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)があります。
まとめ
以上に述べて来たことの要点をまとめます。
- ゼロカーボンとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と植物、その他による吸収量を等しくさせて、CO2の排出量を実質ゼロにすることです。
- ゼロカーボンと同じ意味でよく使われる言葉に『カーボンニュートラル』と『脱炭素』があります。
- ゼロカーボンが注目される背景には地球温暖化危機があります。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素です。
- ゼロカーボンを実現させる方法として、再生可能エネルギーの利用や省エネによるCO2の排出の削減と、植物の光合成や人工的な手段によるCO2の吸収の促進の2つがあります。
参考文献
- 環境省「カーボンニュートラルとは・脱炭素ポータル」
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/ - 資源エネルギー庁「カーボンニュートラルって何ですか?(前篇)〜いつ、誰が実現するの?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html - 資源エネルギー庁「カーボンニュトラルって何ですか?(後篇)〜なぜ日本は実現を目指しているの?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_02.html