カーボンフットプリント(CFP)とは、ある商品やサービスを提供する際に原材料調達から廃棄・リサイクルに至る4つの過程で排出される温室効果ガスの量を、二酸化炭素の重量に換算して表した値です。
CFPの認定を受けた商品には総排出量の数値と各過程での排出量の割合を円グラフで表示したCFPマークが付与されるので、これを商品のパッケージに印刷して消費者に示します。その目的は事業者のCO2排出削減と消費者の低炭素消費生活の推進です。
カーボンフットプリントとは
最近カーボンフットプリントという言葉を耳にします。この言葉の意味、背景、目的などを分かり易く解説いたします。
カーボンフットプリントは二酸化炭素(CO2)の可視化
カーボン(Carbon)の意味は「炭素」ですが、ここでは二酸化炭素(CO2)を指しています。そしてフットプリント(Footprint)の意味は「足跡」です。つまりカーボンフットプリントとは、ある商品やサービスを提供する際に、それぞれのプロセスで排出される温室効果ガスの量をCO2に換算した重量を指しています。
例えば、缶飲料1個の場合、CO2の総排出量は123g、その内、原材料調達(アルミ缶製造、サトウキビ栽培)は20%、生産(ジュース製造、パッケージング)は15%、流通・販売(冷蔵輸送・販売)は30%、使用・維持・管理(冷蔵)は25%、廃棄・リサイクル(空き缶収集、リサイクル処理)は10%、という具合です。
CFP(Carbon Foot Print)の認定を受けた商品には総排出量の数値と各過程での排出量のパーセンテージを円グラフで表示したCFPマークが付与されます。このマークを商品のパッケージに印刷して消費者に示します。
CFPマークが付与されるまでの流れ
CFPマークの付与は、次のような手順を踏んで行われます。
- CFPの表示を希望する事業者が、製品ごとのCFP算定・宣言に関するルールとなる「カーボンフットプリント製品種別基準(CFP-PCR(Carbon Footprint of a Product-Product Category Rule))を策定し、このCFP-PCRの認定を受ける。
- この基準に基づいてCFPを算定する。
- 算定結果の検証を受け、登録公開手続きとCFPマーク使用許諾契約を行う。
カーボンフットプリントの背景にあるのは地球温暖化危機
カーボンフットプリントが問題になる背景には、地球温暖化危機があります。世界の平均気温は上昇を続けており、このまま放置すると海面上昇や干ばつ、洪水などの異常気象のほか、生物多様性の減少などが予測されています。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素です。工業化に伴って急激に増えた人為起源の二酸化炭素の排出量を削減することが、現在世界全体の急務となっています。
このため日本政府も含め世界の多くの国々が、2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素)を実現することを宣言しています。カーボンニュートラルとは、人為起源のCO2の排出量と、自然作用や人工的な手段によるCO2の吸収量を等しくさせて、排出を実質ゼロにすることです。
以下の記事では、より詳しいカーボンニュートラルの解説や国内での事例を紹介しています。
カーボンニュートラルとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と、大気中の二酸化炭素の吸収量を相殺させることです。今、カーボンニュートラルが注目される理由には、地球温暖化対策と経済性の2つがあります。 地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主[…]
カーボンフットプリントの2つの目的
2009年度より2011年度まで経済産業省が主導して実施されたカーボンフットプリント(CFP)・プログラム制度試行事業を2012年4月に継承して運営している「CFPプログラム」は、CFPの主な目的として次の2つを掲げています。
- 事業者と消費者が二酸化炭素排出量削減の行動について「気づき」(問題意識)を共有し、「見える化」(可視化)した情報を用いて、サプライチェーンを構成する諸企業が協力して、CO2排出量の一層の削減を進めること。
- 消費者が、「見える化」された情報を用いて、より一層の低炭素社会の実現を目指す消費生活をするよう自ら変革すること。
カーボンフットプリントを巡る日本の動き
日本では2009年5月、経済産業省、農林水産省、国土交通省、環境省が連携して「カーボンフットプリント制度試行事業」を開始しました。この試行事業は2011年度で終わり、2012年4月より一般社団法人産業環境管理協会が運営する「CFPプログラム」に継承されます。2020年3月に「CFPプログラム」は終了し、同じく同協会が運営する「エコリーフ環境ラベルプログラム」に統合されました。
エコリーフ環境ラベルはCO2排出量ばかりでなく、酸性化、富栄養化、資源消費など、より広い内容を表示するカーボンラベリング(Carbon labeling)です。
まとめ
以上に述べて来たことの要点をまとめます。
- カーボンフットプリント(CFP)とは、ある商品やサービスを提供する時の、原材料調達、生産、流通・販売、使用・維持・管理、廃棄・リサイクルの各過程で排出される温室効果ガスの量をCO2に換算した重量の値です。
- CFPの認定を受けた商品にはCFPマークが付与され、これを商品のパッケージに印刷して消費者に示します。
- CFPの目的は、事業者のCO2排出の一層の削減の推進と、消費者の低炭素消費生活の推進です。
- 日本のCFPは産業環境管理協会が運営する「CFPプログラム」が行って来ましたが、現在、同協会が運営する「エコリーフ環境ラベルプログラム」に統合されています。
参考文献
- 環境省「カーボンフットプリント」
https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/jirei_db/haifusiryo/ha_r_H22kanto_tokyo_kogi1_61-80.pdf - 経済産業省「カーボンフットプリント(CFP)の概要」https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/carbon_neutral/pdf/001_04_01.pdf
- サステナブル経営推進機構「CFPプログラム概要」
https://www.cfp-japan.jp/system/index.html