脱炭素社会とは?脱炭素社会が備えるべきシステムについて解説

脱炭素社会とは、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を等しくさせて、CO2の排出量を実質ゼロにした社会です。
この記事では、脱炭素社会が備えるべきシステムとして、4つのシステムを取り上げて解説します。

脱炭素社会とは

脱炭素社会とは

近頃、「脱炭素社会」という言葉を、よく耳にします。

脱炭素社会の意味

脱炭素とは、人為起源の二酸化炭素[CO2]の排出量と海陸の植物などによる吸収量を等しくさせて、人為起源のCO2の排出量を実質ゼロにすることです。
そして、この脱炭素を実現した社会が、脱炭素社会です。

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今、脱炭素社会が必要とされる理由

現在、世界に地球温暖化の危機が迫っています。この地球温暖化の原因となるのが温室効果ガスで、CO2はその主成分です。
人為起源のCO2の排出量は19世紀の産業革命以後急速に増え続け、これが地球温暖化を招いています。

2015年に採択された「パリ協定」において、「世界の平均気温を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求すること」、「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」という目標が設定されました。
この目標を達成するために、日本も含めた世界の多くの国々が「2050年までに脱炭素を実現する」ことに向けた取組を進めています。

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脱炭素社会が備えるべきシステム

脱炭素社会が備えるべきシステム

脱炭素を実現した脱炭素社会が備えるべきシステムとして、次の4つを取り上げて見ます。

エネルギー供給システム

脱炭素社会のエネルギー供給はCO2を排出しない再生可能エネルギーを用いるべきです。

再生可能エネルギーの内訳

再生可能エネルギーには次の様なものがあります。

太陽光発電

現在、日本では、たいへん普及が進んでいます。
晴れた日の昼しか十分な発電ができないので、安定に電力を供給するためには優れたバッテリーを併用する必要があります。

太陽光発電

洋上風力発電

現在、ヨーロッパの方で普及が進んでいますが、日本も四方を海に囲まれた国なので、大いに期待が集まっている方法です。
昼夜を問わず、また晴雨に関係なく利用できるので安定した電力が供給できます。

地熱発電

日本は火山が多いので、有利な方法です。
これも洋上風力発電と同じく安定した電力を供給できます。
特に火山地帯の深部にある高温・高圧の超臨界水を利用する超臨界地熱発電は大規模化ができるので注目されています。

バイオマス発電

バイオマスとは動植物など、生物資源の総称です。これを燃やせばCO2が発生しますが、これは元々大気中のCO2を吸収してできた資源なので、脱炭素のエネルギー源に加えられています。

水素エネルギー

水素[H2]を燃やすと水蒸気[H2O]が出るだけで、CO2は全く排出されません。
従って、例えば水の電気分解など、CO2を発生しない方法で水素を作れば、これはまさしく脱炭素のエネルギー源になります。

交通システム

脱炭素社会の交通システムのポイントとしては、次の様なものがあります。

  • 自転車専用道路、歩行者用道路の整備
  • 公共交通の充実・整備、利便性の増大:マイカー使用の削減
  • ゼロカーボン・ドライブ車の使用:CO2を発生しない自動車には次の3種類があります。
    1. 電気自動車(EV[Electric Vehicle]):バッテリーでモーターを回転させる
    2. プラグインハイブリッド車(PHEV[Plug-in Hybrid Electric Vehicle]):バッテリーとガソリンエンジン併用
    3. 燃料電池自動車(FCV[Fuel Cell Vehicle]):水素と酸素を反応させ、燃料電池で発電してモーターを回転させる

居住システム

脱炭素社会の住宅としては、省エネ住宅が必要です。
省エネ住宅のポイントには、次の様なものがあります。

  • 素材は地域木材:木材は断熱性に優れている上、炭素貯留の効果あり。地域木材を使えば運搬の際のエネルギー消費が抑制できる
  • 太陽光発電パネルと太陽熱給湯集熱パネルを装備
  • LED照明の使用
  • 高効率給湯器と燃料電池の使用
  • 壁に断熱材を設置して保温・保冷を図る
  • 窓、サッシのガラスには多層ガラスを使用

鉄鋼生産システム(ゼロカーボン・スチール)

鉄鋼業は日本の主力産業の一つですが、現在の鉄鋼生産システムでは必然的に大量のCO2を排出せざるを得ません。
鉄鉱石は酸化鉄の形で鉄を含んでいます。現在の製鉄システムでは、コークス(炭素[]C])を燃焼させることにより酸化鉄から酸素[O]を除くので、この過程でCO2が発生します。
コークスの代わりに水素[H2]を燃焼させれば、水[H2O]が発生するだけで、二酸化炭素[CO2]は発生しません。但し、このゼロカーボン・スチールの実用化は今世紀末と言われています。

まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • 脱炭素とは人為起源のCO2の排出量と、吸収による除去量を釣り合わせて、排出量を実質ゼロにすることです。
  • 脱炭素社会とは上記の脱炭素を実現した社会です。
  • 脱炭素社会が備えるべきシステムとして、エネルギー供給システム、交通システム、居住システム、鉄鋼生産システムの4つを取り上げて解説しました。
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参考文献