脱炭素とカーボンニュートラルの違いは何か?の疑問にお答えします

カーボンニュートラルという言葉の意味は、人為起源の温室効果ガスの排出量を吸収量と釣り合わせて、実質ゼロにすることです。
脱炭素という言葉の普通の使い方では、カーボンニュートラルと同じ意味ですが、特殊な使い方の場合、両者に違いが出ることがあります。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは

この記事のテーマは「脱炭素」という言葉の意味と「カーボンニュートラル」という言葉の意味の違いですが、実は両者に実質的な違いはない、というのが結論です。
そこで、先ず、「カーボンニュートラル」について、その言葉の背景も含めて詳しくご説明します。
そして、次の見出しで、両者の違いについてご説明します。

カーボンニュートラルの意味

「カーボンニュートラル」の「カーボン(carbon)」は「炭素(C)」ですが、ここでは二酸化炭素(CO2)を意味しています。
そして「ニュートラル(neutral)」は「中立」、すなわち「プラス」でも「マイナス」でもない「ゼロ」を意味しています。

さて、上記の二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスの主成分であり、他にメタン、一酸化二窒素、フロンガスなども含めた温室効果ガス全体の76%を占めているので、温室効果ガスの代名詞として使われています。
そこで「カーボンニュートラル」の意味は、人為起源の温室効果ガスの排出量と、植物などによる吸収量を釣り合わせて、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。

排出量を本当にゼロにすることは不可能なので、実質ゼロを狙うわけです。

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今、カーボンニュートラルが注目されている理由

最近、カーボンニュートラルが大いに注目されていますが、その理由は地球温暖化対策が急務となっているためです。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分CO2の人為起源の排出量は産業革命以後、急速に増え続けており、これが地球温暖化危機をもたらしています。

パリ協定

地球温暖化危機の解決に向けて2015年に採択された「パリ協定」において、次のような世界共通の長期目標が設定されました。

  • 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

この目標を達成するために、2021年1月20日の時点で124カ国と1地域が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」ことに向けて取り組みを進めています。日本もこの内に含まれます。

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脱炭素とカーボンニュートラルの違いはあるの?

脱炭素とカーボンニュートラルの違いはあるの?

上に「カーボンニュートラル」についてご説明しましたが、「脱炭素」という言葉も最近、よく耳にします。この二つの言葉の意味に違いはあるのでしょうか?

実は、脱炭素という言葉が、普通に使われる場面では、両者に意味の違いはありません。但し、脱炭素が特殊な使われ方をする場合には、両者に意味の違いが出てきます。

脱炭素の意味(※通常の使い方の場合)

例えばGoogleで「脱炭素とは」というキーワードで検索すると、筆頭に出て来るのが環境省の「脱炭素ポータル」というサイトの「カーボンニュートラルとは」という記事です。
その記事では「カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します」という説明があります。
その説明の後に「カーボンニュートラル実現のためにそれぞれが出来ること」という見出しの下に「企業の皆さま」、「地方自治体の皆さま」、「国民の皆さま」という分岐が設けられています。
「企業の皆さま」という分岐を開くと「脱炭素化事業支援サイト」など、「脱炭素」という言葉が登場して「カーボンニュートラル」と同じ意味で使われていることがわかります。

要するに「カーボンニュートラル」という言葉は10文字で長過ぎるので、他の言葉と組み合わせて使う場合には「脱炭素」という3文字の言葉に置き換えているわけです。
「ウィキペディア」その他のサイトの解説を参照しても、「脱炭素」という言葉の意味として「カーボンニュートラル」と同じことが記されています。

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脱炭素の意味(※特殊な使い方の場合)

参考文献に挙げてある「サステナブルスイッチ」というサイトの「脱炭素かんたん用語集」という記事を引用すると下記のように表現されています。

脱炭素は場合によって「完全に炭素を除く」という意味合を含みますが、カーボンニュートラルの方は「中立にする/差し引きゼロにする」というイメージになります。

引用元:【脱炭素かんたん用語集】要点まとめ!脱炭素とカーボンニュートラル、低炭素の違いなど

つまり、脱炭素という言葉は、温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」ではなく「本当にゼロ」にするという意味で使われる場合がある、と言うことです。

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まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • カーボンニュートラルの意味は、人為起源の温室効果ガスの排出量と、吸収源による吸収量を釣り合わせて、排出量を実質ゼロにすることです。
  • 脱炭素という言葉の、普通に使われる場合の意味は、カーボンニュートラルと同じです。
  • 脱炭素という言葉の特殊な使い方として、人為起源の温室効果ガスの排出量を本当にゼロにする、という意味を持たせることがあります。
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参考文献