脱炭素先行地域とは、日本政府が宣言している2050年脱炭素実現に先駆けて、2030年までに一定範囲の脱炭素実現を目指す地域です。
脱炭素先行地域の選定は環境省が計画提案を募集して行います。第1回の選定結果は2022年4月に発表され、26件が選定されました。
この内3件の計画提案事例をご紹介します。
脱炭素先行地域とは
「脱炭素先行地域」のご説明の前に、先ず、「脱炭素」という言葉についてご説明します。
脱炭素とは
脱炭素とは、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、CO2排出量を実質ゼロにすることです。CO2は地球温暖化をもたらす温室効果ガスの主成分です。
2015年に採択されたパリ協定の取り決めを受けて、日本政府も2050年までの脱炭素実現を宣言しています。
脱炭素とは、人為起源のCO2排出量と吸収量を等しくさせて、排出を実質ゼロにすることです。 脱炭素が必要な理由は地球温暖化危機を回避するためです。脱炭素を実現する方法には、CO2排出の削減と吸収の促進があります。 脱炭素とは、二[…]
脱炭素先行地域の意味
2050年脱炭素実現に向けた先駆けとして、民生部門(家庭部門及び業務その他の部門)の電力消費に伴うCO2の排出削減、また運輸部門や熱利用なども含めて、その他の温室効果ガスの排出削減について、2030年度までに実現する目標が設定されています。この目標の達成を目指す地域が脱炭素先行地域です。
脱炭素とは、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を等しくさせて、人為起源のCO2の排出を実質ゼロにすることです。世界各国と肩を並べて、日本政府も「2050年までに脱炭素を実現すること」を宣言して、これに向けた取組を[…]
2021年6月に政府が掲げた「地域脱炭素ロードマップ」では、少なくとも100か所の脱炭素先行地域において、2025年度までに上記の目標達成の道筋をつけ、2030年度までに実行することが謳われています。
脱炭素先行地域の選定
脱炭素先行地域の選定は次の様なプロセスを踏んで行われます。
- 環境省本省が脱炭素計画提案を募集
- 環境省本省が設置する有識者会議「脱炭素先行地域評価委員会」が提出された計画提案を評価
- 環境省による脱炭素先行地域の選定、公表
上記の選定の要件としては、2030年までに民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロの実現、地域の特性に応じた温暖化対策の取り組み、再エネ設備の最大限の導入、計画の実現可能性、などが含まれています。
脱炭素先行地域に選定された地域には、国から地域脱炭素移行・再エネ推進交付金による支援が行われます。
昨今よく耳にする「脱炭素」という言葉の意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と植物などによる吸収量を釣り合わせて、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることです。 日本も含めた世界の多くの国々が、2050年に脱炭素を実現すること[…]
脱炭素先行地域第1回選定地域の計画提案事例
脱炭素先行地域の第1回選定は、2022年1月25日~2月21日の期間で募集が行われ、79件の計画提案の応募があり、この中から26件の計画提案が選定され、2022年4月に公表されました。
この26件の内から3件の計画提案事例を選んでご紹介します。
北海道石狩市の計画提案事例
北海道石狩市の提案のタイトルは「再エネの地産地活・脱炭素で地域をデザイン」です。
その内容として、次の様な項目が並んでいます。
- 石狩湾新港エリア(札幌圏の産業拠点)において、太陽光発電設備の導入、地域内の木質バイオマス発電設備を利用した特定送配電事業により、電力消費の大きい、地域データセンター群の電力を全て再エネ電力で賄う。
- 再エネポテンシャルを地域の優位性として、産業集積を図る。
- 石狩市を中心核とする公共施設群にマイクログリッド(再エネ電力による小規模エネルギーネットワーク)を構築して、脱炭素実現に取り組む。
長野県松本市・大野川区・信州大学の共同提案事例
この共同提案のタイトルは『のりくら高原「ゼロカーボンパーク」の具現化』です。
その内容として、次の様な項目が含まれています。
- 乗鞍高原地区のゼロカーボンパークの宿泊施設や飲食店を含むすべての民生需要家の電力を、それぞれの屋根を活用した太陽光発電、また地域主導型・地域補益型の水力発電導入によって賄い、脱炭素化を図る。
- 宿泊施設にEV,(Electric Vehcle:電気自動車)、EVバス、木質バイオマスストーブを導入する。
- 観光客が利用するためのE-bike(電動自転車)やグリーンスローモビリティを導入することにより、環境配慮型二次交通を構築する。
熊本県球磨村・株式会社球磨村森電力・球磨村農林組合の共同提案事例
この共同提案のタイトルは『「脱炭素×創造的復興」によるゼロカーボンビレッジ創出事業』です。
その内容として、次の様な項目が含まれています。
- 三ヶ浦地区・神瀬地区・一勝地地区の全域と住生活エリア(ここの村総合運動公園一体には災害公営住宅が大規模に整備されている)の民生需要家、全公共施設に対して、株式会社球磨村森電力との連携の下に、自家消費型太陽光発電・蓄電池をできる限り導入する。
- 荒廃農地や林地を活用した太陽光発電による電力供給を行い、脱炭素化を図る。
- 株式会社球磨村森電力との連携の下に、林業加工施設等の産業部門の脱炭素化を図る。
まとめ
以上に述べて来たことの要点をまとめます。
- 脱炭素先行地域とは、2050年までの脱炭素実現に先行して、2030年までに一定の範囲の脱炭素の実現を目指す地域です。
- 脱炭素先行地域の選定は、環境省が計画提案を募集、応募した計画提案を環境省が設置した評価委員会が評価した上で決定されます。
- 脱炭素先行地域の第1回選定は2022年1月~2月に募集、79件の応募提案の中から26件が選定され、2022年4月に公表されました。
- この26件の選定提案の内、3件の計画提案事例をご紹介しました。
脱炭素社会とは、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を等しくさせて、CO2の排出量を実質ゼロにした社会です。この記事では、脱炭素社会が備えるべきシステムとして、4つのシステムを取り上げて解説します。 脱炭素社会とは[…]
参考文献
- 環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック」
https://www.env.go.jp/content/000053352.pdf - 環境省「脱炭素先行地域選定結果(第1回)について」
https://www.env.go.jp/press/110988.html - 環境省「脱炭素先行地域選定結果(第1回)一覧」
https://www.env.go.jp/content/000039031.pdf - 環境省「第1回 脱炭素先行地域の概要」
https://www.env.go.jp/content/000039032.pdf