地球温暖化の主犯格、大気中のCO2削減を目指して、CO2を回収して再利用する「カーボンリサイクル」という取り組みが進められています。カーボンリサイクルはCO2を回収して貯留するCCSと回収して再利用するCCUに大別されます。
CCSの主役を務めるのは海底に貯留された炭素「ブルーカーボン」です。これはブルーカーボン生態系と呼ばれる海洋植物が大気中のCO2を吸収して作った有機炭素化合物です。
CCUでは大気中のCO2を原料として、化学品、燃料、コンクリートなどの鉱物を製造しています。
大気中のCO2削減戦略の一環「カーボンリサイクル」
地球温暖化の主犯格、大気中の二酸化炭素を削減する戦略の一つとして「カーボンリサイクル」が注目されています。これは大気中の二酸化炭素を回収して再利用する取り組みです。
カーボンリサイクルは「CCS(Carbon Capture and Storage=CO2の回収と貯留)」と「CCU(Carbon Capture and Utilization=CO2の回収と利用)」の2つに大別されます。
CCSの主役「ブルーカーボン」に注目が集まる
大気中のCO2を回収して貯留するCCSの主要な担い手として「ブルーカーボン」というものが注目されています。
海底に蓄えられた炭素、ブルーカーボン
ブルーカーボンとは海藻などの海洋生物が大気中のCO2を原料として、光合成反応により作り出した有機炭素化合物が海底に蓄えられたものです。
ブルーカーボンを作り出す海洋生物、ブルーカーボン生態系は、海草藻場(うみくさもば)、海藻(うみも)藻場、干潟、マングローブ林などに生育しています。
極めて高いブルーカーボンのCO2吸収能力
ブルーカーボンが重要なカーボンリサイクルの担い手として注目される理由は、その二酸化炭素吸収能力が極めて高いためです。ブルーカーボンは地球上の生物が大気中に排出する二酸化炭素の約30%を吸収すると言われています。
CO2を再利用するCCUの内訳
大気中の二酸化炭素を回収して、それを資源として再利用していろいろな製品を作り出すのがCCUです。どんな製品を作り出すのか、その製品の内訳を3種類ご紹介します。
CCUの製品①化学品
CCUで作り出される化学品としては、ポリカーボネイトやウレタンなどの含酸素化合物、バイオマスに由来する化学品、オレフィンやベンゼン、トルエン、キシレンなどの汎用物質があります。
CCUの製品②燃料
CCUで作り出される燃料としては、ジェット燃料やディーゼルに用いられる微細藻類バイオ燃料、メタノール、エタノールなどのCO2由来燃料、メタンなどガス燃料があります。
CCUの製品③鉱物
CCUで作り出される鉱物としてはコンクリート製品、コンクリート構造物、炭酸塩などがあります。
カーボンリサイクルの2つの要素、CCSとCCUを比較する
大気中の二酸化炭素を回収して貯留するCCSと、回収して再利用するCCUそれぞれの特徴と課題を挙げてみます。
CCSの主役、ブルーカーボンの特徴と課題
ブルーカーボンの特徴は大気中から回収した炭素を海底に閉じ込めてしまい、再び大気中に戻さないことです。この意味でブルーカーボンはネガティブ・エミッション(負の放出)のカーボンリサイクルと呼ばれます。また、ブルーカーボンが貯留されている浅瀬の海底の泥は無酸素状態のためにバクテリアによって分解されず、数千年という長期間にわたり、安定に貯留されます。
ブルーカーボンの課題は、その優れたCO2吸収能力が知られたのがようやく10年ほど前のことなので未知の要素が多いこと、クレジット化の取り組みも遅れていること、ブルーカーボン生態系の破壊が進んでいること、などです。
回収したCO2を資源として再利用するCCUの特徴と課題
CCSの特徴、ネガティブ・エミッションに対して、CCUの特徴は、カーボン・ニュートラルを志向するカーボンリサイクルであることです。
カーボン・ニュートラルとは二酸化炭素の排出を差し引きゼロにすること、つまり新たな二酸化炭素の排出をしないことです。例えばCCUで作られたジェット燃料を燃やせば、当然大気中にCO2が放出されます。しかしそのCO2は元々大気中にあったCO2を回収して作られたものですから、差し引きゼロだ、というわけです。
CCUの課題は、現段階の技術では大気中から回収したCO2を再利用して製品を作り出すために、多大なエネルギーとコストを必要とすることです。
まとめ
以上に述べて来たことの要点をまとめます。
- 地球温暖化の主犯格、大気中の二酸化炭素を削減する戦略の一環として、カーボンリサイクルの取り組みが行われています
- カーボンリサイクルは大気中のCO2を回収して貯留するCCSと、回収して再利用するCCUの2つに大別されます
- CCSの主役を務めるブルーカーボンは海洋生物が大気中から吸収したCO2を原料として作る有機炭素化合物です。これは海底に長期間貯留されます
ブルーカーボンの課題は、未知の要素が多いことと、ブルーカーボン生態系の破壊が進んでいることです - CCUは大気中から回収したCO2を原料として、化学品、燃料、鉱物(コンクリートなど)を製造します。CCUの課題は、CO2由来の製品を作り出すために多大なエネルギーとコストを必要とすることです
参考文献
- 資源エネルギー庁「未来ではCO2が役に立つ?!「カーボンリサイクル」でCO2を資源に」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_recycling.html - 資源エネルギー庁「CO2削減の夢の技術!進む「カーボンリサイクル」の開発・実装」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_recycling2021.html - 国土交通省「ブルーカーボンとは」
https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk6_000069.html - 堀 正和(国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所)「CO2吸収源対策の新たな選択肢〜ブルーカーボン〜」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/forum/attach/pdf/top-6.pdf