カーボンニュートラルとは何か、注目される理由、実現方法を徹底解説

カーボンニュートラルとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と、大気中の二酸化炭素の吸収量を相殺させることです。今、カーボンニュートラルが注目される理由には、地球温暖化対策と経済性の2つがあります。

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素です。このため、現在世界の多くの国々が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指して真剣な取り組みを進めています。
また、カーボンニュートラルには企業に利益をもたらす経済性もあり、現在多くの企業がカーボンニュートラルの取り組みを進めています。カーボンニュートラルを実現する方法の一つは二酸化炭素の排出の削減、もう一つは大気中の二酸化炭素の吸収の促進です。

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出と吸収を相殺させること

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出と吸収を相殺させること

カーボンニュートラルという言葉を最近よく耳にします。
この言葉の意味は、人為起源の二酸化炭素(CO2)の排出量と、海陸の植物などによる大気中の二酸化炭素の吸収量を等しくさせて、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることです。人為起源の二酸化炭素とは、人の活動によって出る二酸化炭素のことです。その内訳は化石燃料の燃焼とセメント製造による部分と、森林破壊など土地利用の変化による部分が計上されています。

二酸化炭素の吸収は、自然作用による部分と、人工的な手段による部分に分けられます。自然作用による部分は、海陸の植物の葉緑体が光合成反応により、二酸化炭素を吸収して有機炭素化合物を作り出すことによって行われます。人工的な手段による二酸化炭素の吸収については後述しますが、これも多くの企業が技術開発に取り組んでおり、既に実用化の段階に入っています。

現在の二酸化炭素の排出量と吸収量

気象庁が発表したデータによると、全地球にわたる、1年当たりの人為起源の二酸化炭素排出量と自然作用による吸収量は以下のようになります。単位「tC(トンカーボン)」は炭素に換算した重量で、このデータは2002年〜2011年にわたる平均の値です。

人為起源二酸化炭素排出量

  • 化石燃料燃焼及びセメント製造:約83億tC/年
  • 土地利用変化:約9億tC/年

二酸化炭素吸収量

  • 陸域生態系による吸収:約25億tC/年
    ※但しこの内約9億tC/年は河川によって海洋に運ばれ、普通、海洋による吸収に計上されます
  • 海洋による吸収:約24億tC/年

大気中二酸化炭素増加量

  • (排出量−吸収量):43億tC/年

つまり、現在はカーボンニュートラルには程遠い状態で、大気中の二酸化炭素は毎年約43億tC増加しています。

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なぜ今、カーボンニュートラルが注目されているのか、その2つの理由

なぜ今、カーボンニュートラルが注目されているのか、その2つの理由

今、カーボンニュートラルが問題になっています。その理由は何でしょうか?
その理由の一つは「地球温暖化対策」、もう一つは「経済性と企業の取り組み」です。

地球温暖化対策

カーボンニュートラルが注目されている理由の第1は「地球温暖化対策」です。地球温暖化危機を回避するためには、カーボンニュートラルの実現が必須の課題となっています。日本政府も2050年にカーボンニュートラルを実現することを目指して真剣な取り組みを進めています。

この地球温暖化対策については、後述により詳しくご説明します。

経済性と企業の取り組み

カーボンニュートラルが注目されている理由の第2は「経済性と企業の取り組み」です。

カーボンニュートラルには企業に利益をもたらす経済性もあります。
現在、例えばトヨタ自動車のような大企業をはじめ、中小企業も含めて多くの企業がカーボンニュートラルへの取り組みを成長のチャンスと見なしています。

カーボンニュートラルの取組をを宣言しない企業は消費者に対して環境に配慮していない企業と捉えられ、ブランドイメージに悪影響を与える傾向にあります。また、カーボンニュートラルの事業に加われば、これから需要が確実に伸びる製品を生産する機会にも巡り合えます。

企業のカーボンニュートラルへの取り組みの4つの事例

各企業はどんな取り組みを進めているのでしょうか?以下に4つの企業の取り組みをご紹介します。

トヨタ自動車 カーボンニュートラルの取り組み

トヨタ自動車では「トヨタ環境チャレンジ2050」という取り組みを進めています。その目標は「電動車と再生可能エネルギーで「CO2ゼロ」を実現」と「ホームプラネットの資源保全で「人と自然が共生する社会」の構築」です。
具体的には,自ら再エネ発電→工場・販売店では省エネ技術の展開と再エネ・水素の共同利用→ユーザーのためには地域エネルギー事情に応じた3つの電動車種の使い分け→使用済み電池の再利用・再資源化、というプロセスを考えています。

東芝グループ カーボンニュートラルの取り組み

東芝グループでは、太陽光や風力を利用する再生可能エネルギーシステム、デジタル技術を用いたエネルギーマネジメントシステム、再エネを利用した水素ソリューション、CO2分離回収設備などの、カーボンニュートラル(CNと略記)に関連した製品やサービスを提供しています。
これらのCN関連ビジネスをさらに加速させるため、2021年8月、「カーボンニュートラル営業推進部」を新設しました。

三菱重工エンジニアリング カーボンニュートラルの取り組み

三菱重工エンジニアリングでは、従来、排ガスからのCO2回収ビジネスを行って来ました。これをさらに強化してエナジートランジション(低環境負荷エネルギーへの転換)分野での新たな取り組みを加速させることを目指しています。例えばカーボンフリーのアンモニア、水素などのクリーン燃料の製造やアンモニアの分解による水素製造技術の開発などです。
こういう取り組みを推進させるために2020年12月1日に「脱炭素事業推進室」を新たに
設けました。

川崎重工 カーボンニュートラルの取り組み

川崎重工では低炭素社会の実現を目指して以下の7つの項目に分けた取り組みを進めています。すなわち、生産活動におけるCO2排出量の削減、サプライチェーンにおけるCO2排出量の算出、物流過程におけるCO2排出量の削減、自家発電の導入を検討、再生可能エネルギーの利用、省エネ推進活動、製品貢献によるCO2排出量の削減です。
特に同社の「低濃度二酸化炭素回収システムによる炭素循環モデル構築実証」という取り組みは高い評価を得ています。

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カーボンニュートラルの背景:地球温暖化対策

カーボンニュートラルの背景:地球温暖化対策

今、世界中でカーボンニュートラルの実現に向けて真剣な取組が行われています。この背景には地球温暖化危機があります。

地球温暖化危機

世界の平均気温は工業化が完了する以前(1850〜1900年)に比べると2017年において約1℃上昇しています。そして、この上昇傾向は現在も依然として進行中です。
このまま気温上昇が進む場合に予想されるリスクとして次のようなものが挙げられています。

  • 異常気象のために、世界の至る所で大洪水、大干ばつ、暴風雨や大竜巻などの被害が発生します。
  • 北極、南極の氷が融けることと海水温の上昇による海水の膨張のために、海水面が上昇して陸地が減ってしまいます。
  • 異常気象によって農産物の収穫が減り、食糧危機が訪れます。
  • 陸上や海洋の生態系の攪乱が起こります。

要するに現在、人類は地球上の全生物の存続を脅かす危機に直面しているわけです。

温室効果ガスの主成分は二酸化炭素

地球温暖化をもたらす原因が温室効果ガスです。これは太陽からのエネルギーは通しますが、地球から赤外線の形で出て行く熱は吸収してしまい、地球上の気温を上げる効果を持つ気体です。
この温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどがありますが、主成分となるのは二酸化炭素で、全体の約76%を占めています。

パリ協定で今世紀後半のカーボンニュートラルの実現を取り決め

地球温暖化危機の解決に向けて2015年に採択された「パリ協定」において、次のような世界共通の長期目標が設定されました。

  • 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つと共に、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

この目標を達成するために、2021年1月20日の時点で124カ国と1地域が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」ことに向けて取り組みを進めています。日本もこの内に含まれます。

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カーボンニュートラルを実現する方法1:CO2排出の削減

カーボンニュートラルを実現する方法1:CO2排出の削減

カーボンニュートラルを実現するための方法の一つは、二酸化炭素の排出量を減らすことです。そのためには以下の二つの道が考えられます。

再生可能エネルギーの利用の拡大

再生可能エネルギーとは太陽光、風力、水力など自然の力を基にしたエネルギーです。これらは使っても枯渇せず、何度でも利用できるので、再生可能エネルギーと呼ばれます。
化石燃料をエネルギー源にするとCO2の排出を伴いますが、再生可能エネルギーはCO2
を排出しません。
再生可能エネルギーの利用の仕方にはどのようなものがあるか、見て行きます。

太陽光発電

日本の太陽光発電は固定価格買取制度を導入したことにより、たいへん普及が進みました。
2019年度において日本は太陽光発電の累積導入量で世界第3位に当たります。
効率の良い太陽電池など新しい太陽光発電システムの開発も進められています。

洋上風力発電

これはヨーロッパの方が普及が進んでいます。しかし日本も四方を海に囲まれた国なので、大いに期待が集まっている方法です。
夜昼を問わず、また晴雨に関係なく利用できるので安定した電力供給ができるのが取り柄です。

地熱発電

日本は火山が多いので、世界で第3位の地熱資源国です。これも洋上風力発電と同じく安定して電力を供給できる電源です。
特に火山地帯の深部にある高温・高圧の超臨界水を利用する超臨界地熱発電は大規模化ができるので注目されています。

バイオマス発電

バイオマスとは動植物などの生物資源の総称です。これを燃やせばCO2が発生しますが、これは元々大気中のCO2を吸収してできた資源なので、カーボンニュートラルのエネルギー源に加えられています。

水素エネルギー

水素を燃やすと水蒸気が出るだけで、二酸化炭素は全く排出されません。従って例えば太陽光発電で得られた電力を用いて水を電気分解して水素を作れば、この水素はまさしく脱炭素のエネルギー源になります。

省エネルギーの推進

CO2の排出を削減するもう一つの道は省エネルギー、すなわちエネルギーの節約です。
エネルギー源としてカーボンフリーなものだけで賄うのは無理で、ある程度は化石燃料に頼らざるを得ません。従って省エネルギーがCO2の排出を削減する手段として重要になって来ます。

1979年に、企業を対象にした省エネルギー法が制定されました。これは一定規模以上の工場・事業場の設置者や、運輸業者に対して、エネルギー管理者の選任、エネルギー使用状況の報告、中長期計画の提出などを義務付けるものです。そして、必要に応じて行政指導を行うことになっています。

その後改訂された現行の省エネルギー法では2030年までに、エネルギー消費効率を2013年度に比べて35%改善することを目指しています。

カーボンニュートラルを実現する方法2:CO2の吸収の促進

カーボンニュートラルを実現する方法2:CO2の吸収の促進

カーボンニュートラルを実現するもう一つの方法は、大気中の二酸化炭素の吸収を促進させることです。
大気中のCO2の吸収には、自然作用を利用する吸収と人工的な手段を利用する吸収があります。

自然作用を利用した吸収:植物の光合成

陸上や海洋に生息する植物は、葉緑体の光合成反応により、大気中から吸収した二酸化炭素を原料としてデンプンなどの有機炭素化合物を作り出します。

陸上の植物による吸収:グリーンカーボン

陸上の植物がCO2を吸収して作り出した有機炭素化合物はグリーンカーボンと呼ばれます。
グリーンカーボンを作り出すグリーンカーボン生態系は陸上の森林で、都市部や砂漠地帯を除く陸上の全域に分布しています。

グリーンカーボン生態系は炭素の貯留速度が遅いため、吸収能力はあまり高くありません。
年間の人為起源のCO2排出量の約12%を吸収すると言われています。
また、グリーンカーボンは主として森林地帯の土壌に貯留されているため、空気に触れて分解され易く、貯留期間は数十年~数百年程度です。

しかしグリーンカーボンも大事なCO2の吸収源として、植林を促進するためにグリーンカーボン・クレジットを発行するなどの保護育成策が取られています。

海洋の植物による吸収:ブルーカーボン

海洋の植物がCO2を吸収して作り出した有機炭素化合物はブル—カーボンと呼ばれます。
ブルーカーボンを作り出すブルーカーボン生態系は沿岸の浅瀬にある海草藻場(うみくさもば)、海藻(うみも)藻場、マングローブ林、干潟などに生息しています。ブルーカーボン生態系は炭素の貯留速度が速いため、吸収能力が極めて高く、年間の人為起源のCO2排出量の約30%を吸収すると言われています。

マングローブ林は代表的なブルーカーボンの一つ。効率よく二酸化炭素を吸収し、成長するにつれ樹木中に炭素を貯蔵する
マングローブ林は代表的なブルーカーボンの一つ。効率よく二酸化炭素を吸収し、成長するにつれ樹木中に炭素を貯蔵する

またブル—カーボンは浅い海の底の泥に貯留されますが、ここは無酸素状態なのでバクテリアによる分解が起こりません。従ってブルーカーボンの貯留期間はたいへん長く、数千年にわたります。このためブルーカーボンの活用はネガティブ・エミッション(ゼロではなくマイナスの排出)技術の一つに数えられています。

ブルーカーボンの高いCO2吸収能力と長い貯留期間が認識されたのは約10年ほど前のことで、以後カーボンニュートラルの有望な担い手として大いに注目を浴びています。

大気中のCO2の回収の人工的な手段:CCSとCCU

大気中の二酸化炭素を化学工学的な技術を用いて分離・回収する方法はCCSとCCUに大別されます。

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)

Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収貯留)の略で、CO2を人工的な手段で分離・回収し、それを地中や海中などに長期期間にわたって安定的に貯留してしまう方法です。

CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)

Carbon dioxide Capture and Utilization(二酸化炭素回収利用)の略で、人工的に分離・回収したCO2を資源として利用し、いろいろな製品を作り出す方法です。作り出す製品としては、ポリカーボネイトやウレタンなどの化学品、ジェット燃料やメタノールなどの燃料、コンクリート構造物などの鉱物があります。

まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • カーボンニュートラルとは、人為起源の二酸化炭素の排出量と、大気中の二酸化炭素の吸収量を等しくさせて、人為起源の二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることです。
  • 今、カーボンニュートラルが注目されている理由の一つは「地球温暖化対策」、もう一つは「経済性と企業の取り組み」です。
  • 現在、世界の多くの国々で2050年までにカーボンニュートラルを実現するための真剣な取り組みが行われています。その背景にあるのが地球温暖化危機です。そして地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素です。
  • カーボンニュートラルには企業に利益をもたらす経済性もあり、多くの企業がカーボンニュートラルを成長の機会ととらえて、真剣な取り組みを進めています。
  • カーボンニュートラルを実現する方法の一つはCO2の排出量の削減です。このためには再生可能エネルギーの利用の拡大と省エネルギーの推進が考えられます。
  • カーボンニュートラルを実現する方法のもう1つは大気中のCO2の吸収の促進です。CO2の吸収は海陸の植物の光合成の利用と、人工的な手段の利用によって行われます。

参考文献