ブルーエコノミーとは何か、その意味、動向、課題を優しく解説

「ブルーエコノミー」とは、持続可能性に配慮した海洋経済活動を意味しています。2012年の国連の持続可能な開発会議の場で、初めてこの言葉が登場して以後、ブルーエコノミーは世界で注目されるようになり、2020年12月、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」が最終報告書を発表しました。終りの部分で、ブルーエコノミーの実現に向けた課題を5つ取り上げます。

ブルーエコノミーの意味と、それを巡る現在までの動向

「ブルーエコノミー」の意味は「持続可能な海洋経済活動」

先ず、ブルーエコノミーという言葉の意味と、それを巡る現在までの動向をご説明します。

ブルーエコノミーの意味

ブルーエコノミーの「ブルー」は海を、「エコノミー」は経済活動を意味しています。
従って「ブルーエコノミー」は海洋に関係した経済活動、すなわち水産業、海運業、洋上風力発電、マリンスポーツ、海の観光などを意味しています。

但し、ここに海洋資源や海洋環境を保護する「持続可能」への志向が含まれるのが特徴で、結局「ブルーエコノミー」の意味は「持続可能な海洋経済活動」ということになります。
これはSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の14番目「海の豊かさを守ろう」に応えるものです。

ブルーエコノミーという言葉の登場の発端

ブルーエコノミーという言葉が初めて登場したのは2012年の国連の持続可能な開発会議(リオプラス20サミット)です。

この場で太平洋島嶼国の代表団が、海洋環境の保全と持続可能な利用を志向した経済活動を「ブルーエコノミー」と呼び、島嶼国の経済振興への支援を訴えたのです。

ブルーエコノミーを巡る、その後の動向

上記、2012年の発端以後、ブルーエコノミーという概念は次第に世界で注目されるようになり、いろいろな場で議題に取り上げられました。

2018年には、14カ国の首脳と国連事務総長海洋特使で構成する「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」が設立され、これには日本も参加しています。その後、このパネルは研究会などを積み重ねた上、2020年12月に政策提言を盛り込んだ「持続可能な海洋経済のための変革」という最終報告書を提出しました。

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ブルーエコノミーを巡る5つの課題

ブルーエコノミーを巡る5つの課題

以下にブルーエコノミーに関連して考えるべき課題を5つ取り上げてみます。

課題①海洋保護区を設定し、持続可能な漁業と調和させる

海洋保護区とは、海の生態系を保護し、これを持続的に利用するため、資源開発、漁業、観光などに規制を設けた海域です。
この規制の仕方については、地域ごとに地形、海流、生態系、利用の仕方などが異なるため、国際的に統一された基準はありません。

海洋保護区を設定し、持続可能な漁業と調和させる

課題②IUU漁業を撲滅する

IUU漁業とは「Illegal(違法), Unreported(無報告), Unregulated(無規制)」に行われている漁業を指します。

近年、世界の水産資源はどんどん減少して行く傾向にあります。この主な原因は乱獲や過剰な漁獲にあります。
この乱獲や過剰漁獲を行っている犯人がIUU漁業に他なりません。
世界のIUU漁業による漁獲量は1,100〜2,600万トンにも上ると言われています。

IUU漁業を撲滅する

課題③海洋プラスチックゴミの汚染に対処する

陸上で生産されたプラスチックゴミが海洋に捨てられ、深刻な問題となっています。
海洋中には1億5000万トン以上のプラスチックが既にあり、ここに年間800万トンのプラスチックが新たに流入しています。このまま放置すると2050年には魚よりもプラスチックゴミの方が多くなる、と言われています。

プラスチックゴミは海洋生態系に大きな被害をもたらし、毎年100万羽の海鳥、10万匹の魚、ウミガメ、海生哺乳類がこのために死んでいるのです。

海洋プラスチックゴミの汚染に対処する

課題④海運における脱炭素を推進する

地球温暖化対策として、全世界において脱炭素が志向されています。
海運について言うと、国際海事機構が2030年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を2008年比で40%削減し、さらに2050年までには70%削減する、という目標を掲げています。

日本においても、燃料として液化天然ガス、水素、アンモニアを使うゼロエミッション船を2028年に導入することを目指しています。
また海運、水産業その他における再生可能エネルギーの利用も考えられています。

海運における脱炭素を推進する

課題⑤ブルーファイナンスを推進する

ブルーファイナンスとは、あるべきブルーエコノミーを実現するための資金援助の仕組みのことです。
民間金融機関や投資家が海洋分野に向けて活発に投資することが期待されています。

また投資会社では、持続可能な水産業などの、ブルーエコノミーの推進に向けた投資案件を発掘しています。

ブルーファイナンスを推進する

まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • ブルーエコノミーの意味は、持続可能性に配慮した海洋経済活動(水産業、海運業、洋上風力発電、マリンスポーツ、海の観光など)です。
  • ブルーエコノミーという言葉は、2021年の国連の持続可能な開発会議において太平洋島嶼国の代表団が初めて使いました。
  • その後、この言葉は世界で注目を惹き、2018年には「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」が設立されました。
  • このハイレベル・パネルが2020年12月に最終報告書「持続可能な海洋経済のための変革」を提出しました。
  • ブルーエコノミーの実現に向けて考えるべき課題として「海洋保護区の設定と持続可能な漁業との調和」など5つの項目を取り上げました。

参考文献