ブルーカーボンがSDGsに大きな貢献をしていると言える理由

SDGsとは、持続可能でより良い世界を目指して掲げた17個の目標です。これらは2030年までに達成すべき目標として、2015年の国連サミットで採択されました。

ブルーカーボンとは、海藻などの海洋植物が大気中のCO2を吸収して作り出す有機炭素化合物です。

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これを作り出す海洋植物、ブルーカーボン生態系はSDGsの目標14.「海の豊かさを守ろう」と13.「気候変動に具体的な対策を」に大きな貢献をしています。

SDGsとは持続可能な開発目標

SDGsとは持続可能な開発目標

この記事では、先ず始めにSDGsとは何か、をご説明します。
次にブルーカーボンとは何か、そしてブルーカーボンがSDGsの掲げるどの目標に、いかに貢献しているかをご説明します。

SDGsとは

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を略した呼び方です。
これは2015年9月の国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択されたもので、持続可能でより良い世界を目指すために、2030年までに達成すべき以下の17個の目標を掲げています。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. 全ての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任、つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンの確保)
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

以上の17個の目標のそれぞれに約10個、合計169個のターゲットが付随しており、達成のための具体的な手順を記しています。

SDGsの進捗状況

SDGsは2030年までに達成すべき目標として掲げられていますが、開発途上国ばかりでなく先進国も含めて、達成には程遠い目標が数多くあります。
この進捗状況を見て行く枠組みとしてHLPF(High Level Political Forum、国連ハイレベル政策フォーラム)というものが設けられており、各国が進捗状況を報告し合う場を提供しています。毎年7月にそのレビューが出されています。

ブルーカーボンが関わるSDGsの目標14.「海の豊かさを守ろう」

ブルーカーボンが大きな貢献をしているSDGsの目標14.は「海の豊かさを守ろう」で、その添え書きには「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」と記されています。

これには10個のターゲットが付随しています。
そこでは、

  • 海洋汚染の防止と削減
  • 海洋および沿岸の生態系の回復の取り組み
  • 海洋酸性化の影響の最小限化
  • 沿岸域および海域の保全
  • 漁獲の効果的規制による違法・無報告・無規制漁業の終了
  • 開発途上国の科学的知識の増進・研究能力の向上・海洋技術の移転
  • 海洋および海洋資源の保全・持続可能な利用のための国際法の実施

などが謳われています。

ブルーカーボンのSDGsへの貢献

ブル—カーボンのSDGsへの貢献

ブルーカーボンはSDGsの目標14.「海の豊かさを守ろう」と13.「気候変動に具体的な対策を」にも大きな貢献をしています。

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとは、海藻などの海洋植物が、大気中から海水に溶けた二酸化炭素(CO2)を吸収して、光合成反応により作り出す有機炭素化合物です。
ブルーカーボンを作り出す海洋植物をブルーカーボン生態系と言います。

ブルーカーボン生態系が生息する場所は、マングローブ林、藻場、干潟などの浅海域です。この内、マングローブ林は熱帯地方の海が中心で、日本近海では藻場、干潟が主要なブルーカーボン生態系の生息地になります。
藻場には種子によって増える海草(うみくさ)藻場と、胞子によって増える海藻(かいそう)藻場があります。

ブルーカーボンは優れたCO2吸収源として、脱炭素を目指す現代社会において注目を集めています。

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SDGsの目標14.「海の豊かさを守ろう」へのブルーカーボンの貢献

この目標に対してブルーカーボン生態系は、いろいろ重要な貢献をしています。特に日本近海の主要なブルーカーボン生態系の生育の場である、藻場や干潟が、海の豊かさを守る上で、している貢献を挙げてみましょう。

SDGsの目標14.「海の豊かさを守ろう」へのブル—カーボンの貢献

水質の浄化

藻場は次のような点で海の水質の浄化に貢献しています。

  • 透明度の増加
    藻場は懸濁物質を吸収して海水の透明度を高め、光合成反応を促進します。
  • 窒素・リンの吸収による富栄養化の防止
    藻場は、河川から流入する肥料に含まれる窒素やリンを吸収して海水の富栄養化を防ぎ、植物プランクトンの異常繁殖による「赤潮」の発生を防いで魚介類を守ります。

酸素の供給

ブルーカーボン生態系の葉緑体が行う光合成反応は、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から酸素(O2)と有機炭素化合物(ブルーカーボン)を作り出す化学反応です。
これによってブルーカーボン生態系は海水や大気に酸素(O2)を供給することにより、海洋生態系と陸上生態系の生存を支えています。

生物多様性の維持

ブルーカーボン生態系の生育の場である藻場や干潟は、以下のような点で、海の生物多様性の維持に貢献しています。

  • 多様な生物種の保全:藻場や干潟は、葉の上、葉の間、また海底にいろいろな海洋生物の住処を提供しています。
  • 産卵場の提供:藻場や干潟はいろいろな魚介類に産卵の場を提供しており、「魚介類のゆりかご」と呼ばれています。
  • 幼稚子の保育場の提供:藻場や干潟は魚介類の幼稚子が育つ場を提供しています。
  • 希少生物への餌の提供:藻場を形成する海草や海藻類は、それ自身が魚介類の餌になることにより、魚介類を養っています。

海岸線の保全

ブルーカーボン生態系の生育の場である藻場や干潟は、ブルーカーボン生態系(海草や海藻類)の存在自体により、波浪を抑制し、海底質を安定化させて、海岸線を侵食から守る役割を果たしています。

SDGsの目標13.「気候変動に具体的な対策を」へのブルーカーボンの貢献

SDGsの目標13.「気候変動に具体的な対策を」で、その添え書きには「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」と記されています。ブルーカーボンは、この目標13.にも大きな貢献をしています。

SDGsの目標13.「気候変動に具体的な対策を」へのブル—カーボンの貢献

地球温暖化危機

現在、世界の平均気温は上昇を続けており、このまま放置すると地球規模の生態系の破壊が危惧されています。

カーボンニュートラル宣言

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主成分は二酸化炭素(CO2)です。

人為起源のCO2の排出量は、世界の工業化が進んだ19世紀の終わり頃から急激に増え続けており、これが地球温暖化を引き起こしています。
この対策として、現在、各国の政府が、2050年までに、人為起源のCO2の排出量と自然作用などによる吸収量を等しくさせて、排出量を実質ゼロにすることを宣言しています。

ブルーカーボンは優れたCO2吸収源

ブルーカーボン生態系のCO2を吸収する能力はたいへん高く、年間の人為起源のCO2排出量の約30%を吸収すると言われています。
またブルーカーボンは浅海底の泥の中に貯留されますが、ここは無酸素状態のため分解が起こらないので、貯留期間は数千年という長期間に渉ります。

この2つの特性により、ブルーカーボンは優れたCO2吸収源として、地球温暖化防止に貢献しているのです。

まとめ

以上に述べて来たことの要点をまとめます。

  • SDGsとは、持続可能でより良い世界を目指すために、2030年までに達成すべき17個の目標を掲げたものです。これは2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択されました。
  • SDGsの目標14.は「海の豊かさを守ろう」、目標13.は「気候変動に具体的な対策を」です。
  • ブルーカーボンとは、海藻などの海洋植物が大気中のCO2を吸収して作り出す有機炭素化合物です。
  • ブルーカーボン生態系はSDGsの目標14.と目標13.に大きな貢献をしています。
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参考文献